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払戻金の欄に、見たことのない数字が出ていました。
馬連を1点、100円。払戻70円。
当たってはいません。そのレースは、馬連の的中者が1人もいませんでした。「特払い」という言葉を見たのは、そのときが初めてです。
「誰も当ててないなら、賭け金は返ってくるんじゃないのか」
そう思いながら、70円を受け取りました。30円は戻ってきません。
不思議だったのは、金額の決まり方です。誰も当てていないのだから、集まった金は丸ごと余っているはずです。それでも70円でした。
もうひとつ引っかかったことがあります。同じレースで単勝を買っていた知人は、80円を受け取っていました。 同じ「誰も当てていない」でも、金額が違う。
この記事で出すのは、その70円がどう決まっているかと、あなたが買っていた券種によって損の大きさが変わるという話です。
先に結論:JRAは70円か80円と決めている
まずJRAの表示を引きます。競馬用語辞典の「特払い」の項です。
投票法毎に勝馬投票の的中者がいない場合には、競馬法により、その投票法に投票した購入者全員に対して、特払いとして払戻率70パーセント台の投票法では100円につき70円、払戻率80パーセントの投票法では100円につき80円の払戻を行うことをいう。
(JRA競馬用語辞典「特払い」・2026年9月時点)
全額返還ではありません。 100円が70円か80円になり、残りは戻ってきません。
そして注目すべきは「払戻率70パーセント台の投票法では100円につき70円」という部分です。70パーセント台がひとまとめにされています。
70%台には、4つの払戻率が入っている
払戻率は券種ごとに違います。70パーセント台に入るものを並べます。

| 払戻率 | 券種 | 特払い |
|---|---|---|
| 77.5% | 枠連・馬連・ワイド | 70円 |
| 75.0% | 馬単・3連複 | 70円 |
| 72.5% | 3連単 | 70円 |
| 70.0% | WIN5 | 70円 |
| 80.0% | 単勝・複勝 | 80円 |
※払戻率はJRAの公表値(2014年6月7日改定)、特払い額は用語辞典の表示です
77.5%も70.0%も、同じ70円です。 70パーセント台という区分のなかで、7.5ポイントの幅が一律に丸められています。
あなたが買っていた馬連は、この区分のいちばん上にいます。単勝を買っていた知人が80円だったのは、80パーセントという別の区分に入っていたからです。
区分が2つしかないので、そのなかの差が消えます。 80.0%だけが単独の区分を持ち、残りの4つが1つにまとめられている。この形が、あとで出てくる差を生みます。
馬連は、払戻率より7.5ポイント低い
引き算をします。ここから先は当サイトの計算です。

馬連の払戻率は77.5%。払戻率どおりなら100円につき77.5円のはずです。実際の特払いは70円。差は7.5円です。
券種ごとに並べます。

| 券種 | 払戻率 | 特払い | 差 |
|---|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 80.0% | 80円 | ±0.0pt |
| 枠連・馬連・ワイド | 77.5% | 70円 | −7.5pt |
| 馬単・3連複 | 75.0% | 70円 | −5.0pt |
| 3連単 | 72.5% | 70円 | −2.5pt |
| WIN5 | 70.0% | 70円 | ±0.0pt |
差がゼロなのは、払戻率がちょうど区分の端に一致している券種だけです。単勝・複勝は80.0%で80円、WIN5は70.0%で70円。どちらもぴったり合っています。
いちばん損をするのは枠連・馬連・ワイドです。払戻率が70パーセント台のなかで最も高いのに、いちばん低い値に丸められます。
あなたが受け取った70円は、払戻率どおりの77.5円より7.5円少ない金額でした。
知人の単勝は80.0%で80円。差はゼロです。同じレース、同じ「的中者なし」で、あなただけが7.5ポイント余計に引かれていたことになります。
これは誰かの判断ミスではなく、区分の切り方がそうなっているというだけの話です。70パーセント台をひとまとめにした時点で、77.5%の券種がいちばん不利になることは決まっていました。
特払いは、払戻率が窓口に現れる唯一の場面
当サイトは何も考えずに買い続けた人の回収率は払戻率に落ち着くと繰り返し書いてきました。
これは長期の平均の話で、1レースごとに見れば当たるか外れるかしかありません。 75.0%という金額が窓口で払われることは、普通は起こりません。
ところが特払いは違います。

| 券種 | 特払い時の回収率 |
|---|---|
| 単勝・複勝 | 80.0% |
| 枠連・馬連・ワイド | 70.0% |
| 馬単・3連複 | 70.0% |
| 3連単 | 70.0% |
| WIN5 | 70.0% |
買った全員が、同じ回収率を受け取ります。 的中も不的中もなく、外れの分散がゼロになる。
つまり特払いは、払戻率という抽象的な平均が、実際の金額として窓口に出てくる唯一の場面です。単勝を買っていれば80.0%、馬連なら70.0%。それがそのまま手元に返ります。
普段は何百レースも積み上げて、ようやく平均が見えてきます。それも誤差込みでしか分かりません。特払いのときだけは、1レースで、誤差なしに、払戻率そのものを受け取ります。
珍しい体験をしたという以上の意味はありません。ただ、あなたが普段追いかけている数字が実在することの、いちばん短い証拠ではあります。
「戻ってくる」と思うのは、なぜか
あなたの「賭け金は返ってくるんじゃないのか」という感覚には、理由があります。
誰も当てていないなら、配る相手がいません。 集まった金をそのまま返すのが自然に思えます。

| よくある読み方 | 実際 |
|---|---|
| 「的中者ゼロなら全額返還」 | 100円につき70円か80円です |
| 「レースが不成立だから返金」 | レースは成立しています。払戻先がないだけです |
| 「特払いは得な場面」 | 回収率は払戻率ちょうどで、損も得もしていません |
| 「70円はどの券種でも同じ条件」 | 払戻率との差は0.0〜7.5ポイント違います |
控除は的中者の有無と関係なく引かれます。 オッズの中にすでに入っているのと同じ構造で、的中者がいてもいなくても、控除の分は同じように残りません。
特払いは「損をする場面」ではなく「でたらめに買ったときの平均値を、そのまま受け取る場面」です。得もしていません。
もうひとつ、混同しやすいものがあります。レースそのものが取りやめになった場合の返還です。あちらは投票が成立していないので扱いが別になりますが、当サイトはその条件を一次情報で確認していないので、この記事では扱いません。
特払いはレースが成立したうえで、その投票法の的中者だけがいなかった場合の話です。あなたが受け取った70円は、成立したレースの結果として払われています。
3連単だけ、差がいちばん小さい
区分の切り方から、もうひとつ読めることがあります。70パーセント台のなかで払戻率がいちばん低い券種ほど、特払いの差は小さくなります。
3連単は72.5%で、特払いは70円。差は−2.5ポイント。馬連の3分の1です。
普段いちばん不利な券種が、特払いのときだけいちばん有利になります。3連単は理論平均配当が3,549.6倍と最も大きく、そのぶん払戻率が最も低く設定されています。その低さが、丸めの基準に近いという一点だけで報われます。
もっとも、差が小さいことと得をすることは別です。3連単で特払いを受け取っても回収率は70.0%で、単勝の80.0%より低いままです。縮まるのは「払戻率との距離」であって、受け取る金額ではありません。
ここは読み違えやすいところなので、2つの数字を分けて見てください。受け取る回収率は70.0%か80.0%の2択。払戻率との差は0.0〜7.5ポイントの5段階です。
馬連とワイドを買っている人には、小さな不利がある
7.5ポイントという差をどう見るかです。
まず、めったに起きません。 当サイトは特払いの発生頻度を集計していないので、「何レースに1回」という数字は出しません。体感として珍しい出来事だという以上のことは書けません。
ただし、起きたときの差は確実です。馬連やワイドを買っている人は、特払いのたびに払戻率より7.5ポイント低い金額を受け取ります。枠連も同じ扱いです。
ここから「馬連を避けるべき」という結論は出てきません。 頻度が分からないうえ、券種の選び方はリフトで決まるというのが当サイトの立場です。7.5ポイントは、めったに引かれない小さな追加コストとして頭の隅に置いておく程度のものです。
知っておく価値があるのは、金額の説明がつくことのほうです。70円という数字を見て「なぜ」と思わなくて済みます。
説明がつかない数字を放っておくと、そこだけ記憶に残ります。「あのとき変な払戻があった」という印象が、後から自分の成績の見方を歪めます。 実際には投資100円・払戻70円というだけの1行です。
同じことは、あなたが今後見る他の数字にも当てはまります。制度の側で決まっている金額は、腕とも運とも関係ありません。 分けて置いておけるものは、分けておくほうが記録が濁りません。
記録には、特払いも1つの結果として残す

集計のときに困るのが分類です。特払いは当たりでも外れでもありません。
投資100円に対して払戻70円。回収率を計算するなら、そのまま投資と払戻に足せば正しく処理されます。的中回数には入れないでください。
的中回数に入れると的中率が水増しされ、必要的中率との比較が狂います。逆に払戻をゼロとして記録すると、回収率が実際より低く出ます。
投資額と払戻額には入れる。的中回数には入れない。 この2つを守れば、特払いのあったレースも他と同じように扱えます。
あなたの記録が4列なら、投資額に100円、払戻額に70円を足して、的中回数はそのまま。特別な列は要りません。
判断に迷うのは、月末に振り返ったときです。「あのレースは外れたのか」と思い出そうとしても、70円が入っているので記憶と合わなくなります。その場でメモを1つ残しておくと、後から自分の記録を疑わずに済みます。
年に何度あるかも分からない出来事なので、仕組みを作るほどのことではありません。知っていれば処理できるという程度のものです。
販売ページの「回収率」にも、同じ扱いが要る
馬券術の販売ページに書かれた回収率が、特払いをどう扱っているかは分かりません。めったに起きないので、結果を大きく動かすものでもありません。
ただ、的中率と回収率の両方を出している商材なら、特払いの扱いで両者の整合が崩れることはあり得ます。当サイトが採点に使うのは表示された数値そのものなので、そこは読者側で差し引いて読むしかない部分です。
単勝と複勝を扱うコンピの極意は1,800円の教材です。この2券種は特払いでも払戻率との差がゼロなので、少なくともこの論点では影響を受けません(販売ページの表示は単勝111%・複勝100%。販売者による表示・2026年9月時点)。
3連馬券1点主義(8,800円)は3連単の型で、差は−2.5ポイントです。1点で狙う設計なので、そもそも自分が当てていない場面の話になります。
18種を1枚の表に並べた結果はハブ記事にあります。
この記事が確認できていないこと

| 項目 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 特払いの発生頻度 | 集計していないので出しません |
| 「3連単で起きやすい」 | データがないので主張しません |
| 競馬法の条文 | 用語辞典の表示を引いただけで、条文は確認していません |
| 地方競馬の扱い | JRAの用語辞典を出典にしたので、範囲はJRAです |
払戻率はJRAの公表値、特払い額は用語辞典の表示、差の引き算は当サイトの計算です。3つを混ぜないでください。
出典についても1つ書いておきます。JRAの公式サイトは Shift_JIS で書かれています。 文字コードを取り違えて読むと本文が丸ごと化けるので、「該当する記載が見当たらない」と誤って結論しやすい箇所です。この記事の引用は、正しい文字コードで読み直したうえで取りました。
70円を見たときにやること

2番目を省かないでください。 券種が分かれば、差が0.0ポイントなのか7.5ポイントなのかが決まります。
3番目まで進めば、その70円をどう記録するかも決まります。投資額と払戻額に足して、的中回数には足さない。 それで終わりです。
差の大きさを知ったからといって、明日の買い方が変わるわけではありません。変わるのは、説明のつかない数字が1つ減ることだけです。
この記事の計算方法
- 特払いの定義と金額は、JRA競馬用語辞典「特払い」(2026年9月時点)の表示をそのまま引用しました。競馬法に基づく制度とされていますが、当サイトは条文そのものを確認していません。
- 払戻率はJRAの公表値(2014年6月7日改定):単勝・複勝80.0% / 枠連・馬連・ワイド77.5% / 馬単・3連複75.0% / 3連単72.5% / WIN5 70.0%。
- 差(0.0〜7.5ポイント)は当サイトの引き算です。払戻率どおりなら100円につき何円かを出し、特払い額との差を取りました。枠連・馬連・ワイド77.5%→70円で−7.5pt、馬単・3連複75.0%→−5.0pt、3連単72.5%→−2.5pt、単勝・複勝80.0%とWIN5 70.0%は±0.0pt。
- 特払い時の回収率は、100円につき70円なら70.0%、80円なら80.0%です。的中・不的中の区別がないので、その券種を買った全員が同じ値になります。
- 特払いの発生頻度は出していません。 実際のレース結果を集計していないためで、「どの券種で起きやすいか」も主張していません。
- 出典はJRAの用語辞典なので、この記事の範囲はJRAです。地方競馬の扱いは確認していません。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトの計算と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 特払いは全額返還ではありません。 100円につき70円か80円です
- JRAの表示は「払戻率70パーセント台の投票法では70円、80パーセントの投票法では80円」
- 70パーセント台には4つの払戻率(77.5 / 75.0 / 72.5 / 70.0%)が入り、全部70円に丸められます
- 枠連・馬連・ワイドは払戻率77.5%に対して70.0%。差は−7.5ポイントでいちばん大きくなります
- 馬単・3連複は−5.0pt、3連単は−2.5pt。単勝・複勝とWIN5は差ゼロです
- 特払いのとき回収率はちょうど70.0%か80.0%。 払戻率が窓口に現れる唯一の場面です
- 記録では投資額と払戻額に入れ、的中回数には入れないでください
あなたが次に70円を見たときにやることは、券種を確かめることです。 馬連なら7.5ポイント、3連単なら2.5ポイント。同じ70円でも、払戻率との距離が違います。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。