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マルチにチェックを入れるとき、あなたは迷っていません。
軸は決めた。相手は5頭。点数は60点。1点100円で6,000円。3連単の軸1頭マルチ、いつもの形です。
先週は軸が2着でした。当たりました。 配当は48倍、4,800円。投資6,000円だったので、1,200円のマイナスです。
「当たったのに減るんだよな」
その前の週は軸が1着で、相手2頭も来て、18,000円。 月単位で見ると、だいたいトントンか少し下。5年やって、年ごとの収支は一度もプラスになっていません。
1着固定なら20点、2,000円で済むことは知っています。ただ、軸が2着や3着に来た週を思い出すと、手が伸びません。 「あのときマルチじゃなかったら、ゼロだった」——その記憶が毎週チェックを入れさせています。
一度だけ、1着固定に絞った週がありました。軸は3着。画面には「不的中」だけが残りました。 その日から、チェックを外したことはありません。
外したい気持ちがないわけではないのです。投資額が3分の1になるなら、同じ予算で3倍のレースを買える。 それは分かっている。分かっていて、毎週同じところで止まります。
この記事で出すのは、マルチと1着固定のどちらが自分に合うかを決める、たった1つの割り算です。
先に結論:マルチの合格ラインは、軸の3着以内率22.989%
3連単の軸1頭マルチは、軸が1着でも2着でも3着でも当たります。相手17頭なら、1着固定の272点が3倍になって816点です。
合格ラインは、軸馬の選び方と同じ出し方で求まります。
軸1頭型の合格ライン = 点数 ÷ 理論平均配当

22.989%。 これが、マルチで元を取るために軸に要求される3着以内率です。
1着固定のときは 272 ÷ 3,549.6 = 7.663% で、こちらは1着率でした。
つまりマルチにするという操作は、軸を測る物差しを「1着率」から「3着以内率」に載せ替えることです。着順が緩むぶん、要求される率の種類が変わります。
1着固定とマルチで、測っている率が入れ替わる
馬単も同じ構造です。馬単のマルチは軸が1着でも2着でもいいので、点数は2倍になります。

| 買い方 | 点数(相手17頭) | 合格ライン | 軸の何を測っているか |
|---|---|---|---|
| 馬単・1着固定 | 17点 | 7.407% | 1着になる率 |
| 馬単・マルチ | 34点 | 14.815% | 2着以内に来る率 |
| 3連単・1着固定 | 272点 | 7.663% | 1着になる率 |
| 3連単・マルチ | 816点 | 22.989% | 3着以内に来る率 |
4つとも、相手を何頭に絞っても合格ラインは動きません。相手を5頭にすれば点数は3分の1近くに減りますが、相手が残りの枠を捕まえる確率も同じだけ減るからです。
ここでひとつ、はっきりさせておきます。相手の選び方が軸の実力と無関係なら、という条件つきです。相手の選び方にも腕があるなら、その腕は相手の頭数の話として別に測ることになります。
でたらめとの比は、4つとも同じ値になる
合格ラインの数字だけ見ても、それが厳しいのかは分かりません。何も考えずに軸を選んだ馬と比べます。
18頭立てででたらめに1頭選べば、1着率は1÷18=5.556%、2着以内は2÷18=11.111%、3着以内は3÷18=16.667%です。

| 買い方 | 合格ライン | でたらめな馬 | 比 |
|---|---|---|---|
| 馬単・1着固定 | 7.407% | 5.556% | 1.3333 |
| 馬単・マルチ | 14.815% | 11.111% | 1.3333 |
| 3連単・1着固定 | 7.663% | 5.556% | 1.3793 |
| 3連単・マルチ | 22.989% | 16.667% | 1.3793 |
3連単はどちらも1.3793、馬単はどちらも1.3333。 この値は、その券種の払戻率の逆数です(3連単72.5%、馬単75.0%)。
当サイトではこの倍率をリフトと呼んでいます。券種を決めるときの物差しと同じものです。
言いたいことは1つです。マルチにしても、軸に要求される精度は1ミリも緩みません。 緩むのは着順の条件だけで、そのぶん物差しが「3着以内率」という別の目盛りに切り替わります。
勝ち切り率 = 1着率 ÷ 3着以内率
では、どちらを選ぶべきなのか。軸の2つの率の比で決まります。
勝ち切り率 = 1着率 ÷ 3着以内率
3着以内に来たうち、何回が1着だったか。それだけです。

3着以内率が30.0%で、そのうち1着が10.0%なら、勝ち切り率は33.33%。3回に1回は勝ち切っている軸、という意味になります。
ここで、でたらめな馬の勝ち切り率を出してみてください。1着率5.556% ÷ 3着以内率16.667% = 33.33% です。
そして合格ライン同士の比も見てください。7.663% ÷ 22.989% = 33.33%。
3つの33.33%が、同じ場所を指しています。
でたらめな馬は、ちょうど境界線の上に立っている
これが何を意味するか、並べます。

| 軸の勝ち切り率 | どちらが先に成立するか | どういう馬か |
|---|---|---|
| 33.33%より上 | 1着固定 | 来たときは勝ち切るタイプ |
| ちょうど33.33% | 完全に同じ | でたらめに選んだ馬と同じ配分 |
| 33.33%より下 | マルチ | 掲示板は来るが勝ち切れないタイプ |
馬単なら境界は 1着率 ÷ 2着以内率 = 50.00% です。でたらめな馬は 5.556 ÷ 11.111 = 50.00% で、やはり境界の上に立ちます。
あなたが5年間「安心」だと思っていたマルチは、勝ち切り率が33.33%を割る軸のための形です。掲示板には来るけれど勝ち切れない馬を軸に据えているなら、マルチは正しい選択になります。
逆に、勝ち切る馬を軸にしているのにマルチで買っているなら、点数を3倍払って、有利な目盛りを捨てていることになります。
回収率の比も、まったく同じ1本の線で決まる
「成立しやすさ」と「回収率の高さ」は別の話に聞こえます。ところが、この2つは一致します。
回収率は「実際の率 ÷ 合格ライン」で出ます。だから2つの回収率の比を取ると、合格ラインの比=33.33%が分母に残ります。
1着固定の回収率 ÷ マルチの回収率 = 勝ち切り率 × 3
(馬単は×2です)

軸の3着以内率を30.0%に固定して、勝ち切り率だけ動かします。
| 勝ち切り率 | 1着率 | 1着固定の回収率 | マルチの回収率 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 20.00% | 6.00% | 78.30% | 130.50% | 0.600 |
| 25.00% | 7.50% | 97.87% | 130.50% | 0.750 |
| 33.33% | 10.00% | 130.50% | 130.50% | 1.000 |
| 40.00% | 12.00% | 156.60% | 130.50% | 1.200 |
| 50.00% | 15.00% | 195.75% | 130.50% | 1.500 |
| 60.00% | 18.00% | 234.90% | 130.50% | 1.800 |
マルチの列は、どの行でも130.50%のまま動きません。 3着以内率を30.0%に固定したので当然です。動くのは1着固定の列だけ。
そして33.33%の行で、2つがぴったり交差します。
馬単も同じ形です。2着以内率を40.0%に固定します。
| 勝ち切り率 | 1着率 | 1着固定の回収率 | マルチの回収率 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 35.00% | 14.00% | 189.00% | 270.00% | 0.700 |
| 40.00% | 16.00% | 216.00% | 270.00% | 0.800 |
| 50.00% | 20.00% | 270.00% | 270.00% | 1.000 |
| 60.00% | 24.00% | 324.00% | 270.00% | 1.200 |
| 70.00% | 28.00% | 378.00% | 270.00% | 1.400 |
⚠️ 上の2つの表に入れた率(3着以内率30.0%、2着以内率40.0%、勝ち切り率20〜70%)は、すべて仮に置いた値です。当サイトは特定の馬や騎手の1着率・3着以内率を集計しておらず、「この馬の勝ち切り率はいくつだ」という主張はしていません。
でたらめな馬なら、3倍買っても回収率は72.5%のまま
いちばん効く行を取り出します。軸をでたらめに選んだ場合です。
1着固定の回収率は 5.556% ÷ 7.663% = 72.50%。マルチは 16.667% ÷ 22.989% = 72.50%。
完全に同じです。 そしてこの72.5%は、3連単の払戻率そのものです。
点数を増やしても回収率が動かないのと、まったく同じことが起きています。軸の実力に偏りがなければ、点数を3倍にしても回収率は1ポイントも動きません。 動くのは投資額だけです。
馬単も同じで、でたらめな軸ならどちらも75.00%。払戻率ちょうどです。
マルチが効くか効かないかは、あなたの軸が「勝ち切る側」か「粘る側」のどちらかに偏っているときにしか決まりません。 偏りがゼロの軸では、どちらを選んでも結果は変わりません。
点数は3倍になるのに、合格ラインは1ミリも緩まない
投資額の側も見ておきます。3連単マルチの点数は、1着固定の3倍です。

| 相手の頭数 | 1着固定の点数 | 1着固定の投資額 | マルチの点数 | マルチの投資額 |
|---|---|---|---|---|
| 3頭 | 6点 | 600円 | 18点 | 1,800円 |
| 5頭 | 20点 | 2,000円 | 60点 | 6,000円 |
| 7頭 | 42点 | 4,200円 | 126点 | 12,600円 |
| 10頭 | 90点 | 9,000円 | 270点 | 27,000円 |
| 17頭 | 272点 | 27,200円 | 816点 | 81,600円 |
※1点100円の場合
相手を5頭にしているあなたの場合、マルチにした時点で1レース2,000円が6,000円になっています。年100レース買うなら、20万円が60万円です。
この3倍は、合格ラインを1ポイントも下げてくれません。 3着以内率22.989%という要求は、相手を17頭に広げても5頭に絞っても同じままです。
次の土曜、チェックを外すかどうかを決められるとして
過去の記録を開いたところを考えてみてください。軸にした馬が3着以内に来たレースだけを数える。そのうち1着だったレースを数える。割る。
30回中10回なら33.33%。ちょうど境界です。30回中14回なら46.7%で、1着固定のほうが回収率は1.40倍になります。
そこから先は迷いません。チェックを外して、投資額が3分の1になります。
ただし、ここには苦いところがあります。 その割り算の答えが33.33%を割っていたら、あなたのマルチは正しかったということになります。5年間の判断は間違っていなかった。それでも年単位の収支はマイナスのままです。
つまり、勝ち切り率はマルチか1着固定かを決めるだけで、収支がマイナスである理由そのものには答えません。 そちらは軸の3着以内率が22.989%に届いているかという、別の判定になります。
提案はこうです。割り算を2回やってください。 1回目が勝ち切り率で、形が決まります。2回目が3着以内率そのもので、そもそも成立しているかが決まります。順番はこの通りです。 成立していない軸をマルチから1着固定に替えても、減り方が変わるだけです。
この計算が言っていないこと

| よくある読み方 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 「マルチは当たりやすいから得」 | 当たりやすさと回収率は別。合格ラインも同じ比で上がります |
| 「この馬の勝ち切り率は◯%だ」 | 集計データを持っていないため出しません |
| 「勝ち切り率が高ければ勝てる」 | 形が決まるだけです。成立するかは3着以内率の側で決まります |
| 「マルチは点数が多いぶん有利」 | 点数は投資額を3倍にするだけで、要求される率は変わりません |
合格ラインが見ているのは「でたらめな軸より、その券種の払戻率の逆数の倍だけ上か」という一点です。実際の的中率がそこを超えているかどうかは、あなたの記録からしか出ません。
マルチのまま買い続けるか、勝ち切り率を測るか

5年ぶんの記録があるなら、新しく買う必要はありません。 軸が3着以内に来たレースを拾って、そのうち1着だった回数を数えるだけです。
30レースぶんあれば、おおよその見当はつきます。馬単で買っているなら、2着以内に来たうち何回1着だったかを数えて50.00%と比べてください。
数えた結果が33.33%のすぐ近くだったときは、どちらでも変わらないという答えです。その場合は投資額の少ない1着固定を選ぶのが素直になります。同じ予算でレース数を3倍にできるぶん、判定も3倍速く進みます。
はっきり下回っていたなら、あなたの5年間のマルチは形として正しかったことになります。そのときに次に見る数字は、軸の3着以内率が22.989%に届いているかどうかです。届いていないなら、形ではなく軸そのものを替える話になります。
販売ページの「マルチ推奨」も、同じ枠で読める
馬券術の販売ページには「マルチで買ってください」という指定がよく出てきます。同じ枠に載せられます。
見るのは2つです。表示されている率が1着率なのか3着以内率なのかと、マルチ込みの点数で回収率が出ているのか。この2つが決まらないと、比べる相手が7.663%と22.989%で3.00倍動いてしまいます。
3連馬券1点主義は、3連単を1点で狙う設計で、マルチとは正反対の型です。販売ページでは3連単の的中率3.4%・回収率316.0%という表示があります(販売者による表示・2026年9月時点)。着順を完全に決め切る型なので、1着率だけで採点できます。
シャイニング★ダークホースは穴馬候補を4頭選ぶ設計で、3連単なら24点(4頭の並べ方)になります。軸を置かない型なので、この記事の判定枠には乗りません。 販売ページに的中率24.3〜33.2%の表示はありますが回収率の数値がなく、当サイトでは採点できていません(販売者による表示・2026年9月時点)。
判定枠に乗るのは軸を置く型です。アイ・ウイナー1(9,900円)は単勝1点で的中率60.3%・回収率184.7%の表示があり、余裕は1.85倍と採点できます(販売者による表示・2026年9月時点)。
マルチ指定なのに1着率で書かれている、あるいは点数がマルチ前の数字、というときは採点が成立しません。 18種を同じ式に載せてみて数値がそろったのは7種でした。その一覧はハブ記事にあります。
勝ち切り率を出す3ステップ

1番目で、買ったレースだけを拾わないでください。 軸にした馬が3着以内に来たレースが分母です。買った買わないは関係ありません。
3番目で33.33%と比べたら、そこで形は決まります。迷う余地は残りません。 上なら1着固定、下ならマルチ、ぴったりならどちらでも同じです。
記録に足すのは1列だけです。軸にした馬の着順。 1着か、2〜3着か、それ以外か。この3分類さえあれば、勝ち切り率はいつでも出し直せます。
この記事の計算方法
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🚨シャイニング★ダークホースは、2026年9月末でinfotopでの販売を休止しています(販売者インフォレース出版による告知・2026年9月18日。理由はinfotop側のクレジット決済障害で、復旧見通しは未定とされています)。この記事に載せた数値は休止前の販売ページの表示で、当サイトの計算と書き分けています。休止であって終了ではないため、記述は残しています。
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軸1頭型の合格ライン = 点数 ÷ 理論平均配当。18頭立て・相手17頭で、馬単1着固定17÷229.5=7.407%、馬単マルチ34÷229.5=14.815%、3連単1着固定272÷3,549.6=7.663%、3連単マルチ816÷3,549.6=22.989%。
- 理論平均配当 = 組み合わせ数 × 払戻率。18頭立ての馬単はP(18,2)×75.0%=229.5倍、3連単はP(18,3)×72.5%=3,549.6倍。
- 合格ラインが相手の頭数によらないのは、相手の選び方が軸の率と無関係な場合です。点数と「相手が残り枠を捕まえる確率」が同じ比で動くため、割り算で残るのは軸の率だけになります。相手の選び方に腕があるなら、それは別に測る必要があります。
- 勝ち切り率 = 1着率 ÷ 3着以内率(馬単は 1着率 ÷ 2着以内率)。でたらめな軸では3連単1÷3=33.33%、馬単1÷2=50.00%になります。
- 1着固定の回収率 ÷ マルチの回収率 = 勝ち切り率 × 3(馬単は×2)。回収率を「実際の率÷合格ライン」で出したときに、合格ライン同士の比が残る形です。
- 表に置いた率(3着以内率30.0%、2着以内率40.0%、勝ち切り率20〜70%)はすべて仮の値です。当サイトは実在の馬・騎手・血統の1着率や3着以内率を集計しておらず、個別の勝ち切り率も主張していません。
- JRA払戻率(2014年6月7日改定):単勝・複勝80.0% / 枠連・馬連・ワイド77.5% / 馬単・3連複75.0% / 3連単72.5% / WIN5 70.0%。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトの計算と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 3連単マルチの合格ラインは、軸の3着以内率22.989%(816点÷3,549.6倍)。1着固定は1着率7.663%
- マルチは保険ではなく、測る物差しを1着率から3着以内率に載せ替える操作です
- でたらめな軸との比は4つとも払戻率の逆数(3連単1.3793 / 馬単1.3333)。マルチにしても要求される精度は緩みません
- 勝ち切り率 = 1着率 ÷ 3着以内率。でたらめな馬はちょうど33.33%(馬単は50.00%)で、境界の上に立っています
- 33.33%より上なら1着固定、下ならマルチ。合格ライン同士の比と完全に同じ値です
- 1着固定の回収率 ÷ マルチの回収率 = 勝ち切り率 × 3。成立しやすさと回収率は同じ1本で決まります
- でたらめな軸だと、点数を3倍にしても回収率は72.5%のまま(馬単は75.0%)。動くのは投資額だけです
- 相手5頭なら、マルチにした時点で1レース2,000円が6,000円になります
あなたが最初にやることは、軸が3着以内に来たレースを拾って、そのうち1着だった回数を数えることです。 30回ぶんあれば、チェックを外すかどうかが決まります。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。