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あなたが馬券を決めるのは、土曜の朝です。
平日は会社なので、週末にまとめて買います。新聞は金曜の夜に読み終え、朝のうちにネット投票で全部入れてしまうのが20年来の習慣です。
先月、昼に画面を開いたら、本命の騎手が代わっていました。
馬場も、朝には良だったものが重になっていました。
「これ、買い直せないのか」
調べても、答えらしい答えは出てきませんでした。もやもやしたまま、結局その日は押さえを5点足しました。
この記事で出すのは、買い直せるのかという問いへの答えと、押さえを足したときに合格ラインがいくつになるかという計算です。
先に言っておくと、押さえをやめろという話ではありません。足すこと自体は、買ったあとに残された唯一の手段です。 出すのは、それを使うと数字がどちらへ動くかというだけのものです。
先に結論:買ったあとに使える手段は、1本しかありません
買ったあとにできることを数えると、「足す」の1本だけが残ります。
減らすことはできません。取り替えることもできません。払い戻して買い直す窓口は存在しません。

これは慣行ではなく、JRAが明文で書いていることです。次の節にそのまま引きます。
JRAは「一切行いません」と書いています
『馬券のルール』の発売の項に、こうあります。
競馬を円滑に実施するため勝馬投票券の発売開始後、同枠取消に伴う取替えを含めて出走取消、競走除外、騎手変更、馬場状況の変更等に伴うお取替えは一切行いませんので、あらかじめご承知のうえ、勝馬投票券をお買い求めください。
「騎手変更」も「馬場状況の変更」も、名指しで書かれています。
あなたが昼に見たものは、どちらもこの一文の中にありました。調べても答えが出なかったのではなく、答えが「できません」だったということになります。
同じ項には、買った直後の確認についても書かれています。
お買い求めの勝馬投票券はその場で直ちに日次・場名・競走番号・馬(枠)番号・金額等をお確かめください。後刻間違いの旨の申し出がありましても、お取替えいたしません。
押し間違いも取り替えの対象外です。券面の確認は、買った直後にしかできない作業になります。
何が返還され、何が返還されないのか
返還という言葉は、レースが成立しなかったときにだけ使われます。
| 起きたこと | 返還 | 取替え |
|---|---|---|
| 出走取消・競走除外(発走前) | その馬番を含む券 | なし |
| 枠連で同枠に2頭以上残る | なし | なし |
| 騎手変更・馬場状況の変更 | なし | なし |
| 競走中止(発走後に馬が止まる) | なし | なし |
| 競走を取り止め、別の日に実施 | 全額 | — |
| 競走の不成立 | 全額 | — |
| 券の破損 | なし(破損無効) | なし |

下の2行だけが全額です。JRAの表示では、発売開始後に競走の全部または一部を取り止めて別の日に実施することになった場合と、裁決委員が競走を不成立と認めた場合がこれにあたります。
不成立の条件は2つ書かれています。災害や投石等の妨害行為その他の事由により競走または開催執務委員の職務の執行に重大な支障があったときと、競走が所定の走路と異なる走路で行われたときです。
そして注釈がついています。競走中止馬によるもの等、当該競走の出走人馬に起因するものは不成立としない、と。馬が止まったことは、レースの不成立にはなりません(競走中止の記事にまとめました)。
返還の境目は「馬が走らなかったか」ではありません
ここまでを1行にすると、こうなります。
返ってくるのは、レースそのものが無くなったときだけです。あなたの前提が崩れたときではありません。
騎手が代わるのも、馬場が渋るのも、レースは予定どおり成立しています。 だから返還の対象になりません。
発走前に馬が消えた場合は返還されますが、それも返還の記事で出したとおり、投資を巻き戻すだけです。合格ラインはむしろ 頭数÷(頭数−1) 倍に上がります。
どの経路をたどっても、条件が良くなる方向には動きません。 返ってくるか、そのままか、当たる目だけが減るかの3通りしかありません。
押さえを足すと、合格ラインは (n+m)÷n 倍になります

もとの買い目がn点、足した点数がm点なら、合格ラインの倍率は点数の比そのものです。平均配当も券種も入りません。
あなたが先月足した5点で計算します。

| もとの点数 | 足す点数 | 合計 | 合格ラインの倍率 |
|---|---|---|---|
| 10点 | 1点 | 11点 | 1.1000 |
| 10点 | 2点 | 12点 | 1.2000 |
| 10点 | 5点 | 15点 | 1.5000 |
| 10点 | 10点 | 20点 | 2.0000 |
| 20点 | 5点 | 25点 | 1.2500 |
| 30点 | 6点 | 36点 | 1.2000 |
| 136点 | 16点 | 152点 | 1.1176 |
10点に5点足すと1.5000倍です。もとが10点だったなら、押さえ5点は点数を1.5倍にする操作でした。
同じ5点でも、もとが30点なら1.1667倍にしかなりません。押さえの重さは、もとの点数が少ないほど大きくなります。
狙う配当帯も、同じ倍率で上げ直すことになります
合格ラインが上がるというのは、具体的にどういうことか。必要な平均配当 = 点数 ÷ 的中率で書き直すと見えます。

| もとの買い方 | 必要な平均配当 | 5点足したあと | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 10点・的中率5% | 200.0倍 | 300.0倍 | 1.5000 |
| 10点・的中率10% | 100.0倍 | 150.0倍 | 1.5000 |
| 20点・的中率8% | 250.0倍 | 312.5倍 | 1.2500 |
| 30点・的中率12% | 250.0倍 | 300.0倍 | 1.2000 |
10点で平均200.0倍を狙っていた人が5点足すと、同じ的中率のままなら平均300.0倍が必要になります。
100倍ぶん、狙う配当帯を上げ直すことになります。押さえを足す動機はたいてい「当てやすくするため」なので、方向が逆になっています。
足したその1点が合格するかどうかは、別に測れます
点数の比だけを見ると、押さえは必ず悪手のように見えます。そうとは限りません。
当サイトが点数と的中率の記事で出したとおり、足す1点の合格ライン = 1 ÷ 狙う平均配当でした。もとの買い目が何点でも、券種が何であっても、この線だけは変わりません。
| 狙う平均配当 | 足す1点に必要な的中率 |
|---|---|
| 30倍 | 3.333% |
| 100倍 | 1.000% |
| 300倍 | 0.333% |
| 612倍 | 0.163% |
| 3,549.6倍 | 0.028% |
その1点が単独でこの線を超えているなら、足しても全体は悪くなりません。
問題は、押さえで足す1点がたいてい自分の評価の低い馬だという点です。評価が低いから押さえと呼ばれています。
押さえをやめるべきかというと、そうではありません
ここまで読むと、押さえを全部やめたほうがいいように見えます。そこまでは言えません。
押さえが効くのは、もとの買い目が薄すぎるときです。1点買いで外し続けている人が2点目を足すのは、その1点が線を超えていれば正しい判断になります。
問題は足すこと自体ではなく、足す判断が昼に起きることです。土曜の朝に10点で組んだ設計と、昼に見た騎手変更は別の情報で、混ぜると点数だけが増えます。
朝のあなたは、新聞を読み終えて、狙う配当帯を決めて、点数を10点に収めていました。昼のあなたは、その設計を見ていません。 見ているのは騎手欄と馬場欄の2つだけです。
そして、減らす手段は最初から付いていません。 増やす方向にしか動けない道具を、動揺しているときに使うことになります。
ここに、この記事でいちばん実用的な線が引けます。朝のうちに「足していい上限点数」を決めておくと、昼の判断が点数の比較だけで済みます。10点で組んだなら、上限を12点にするか15点にするかで倍率は1.2000倍と1.5000倍。どちらを許すかは、昼ではなく朝に決められる数字です。
締切は発走の2分前。ベルが鳴れば発売機は止まります
足せる時間にも限りがあります。JRAの表示では、事業所における発売締切時刻は発走時刻の2分前です。
発売締切のベルが鳴りますと、発売機は自動的に停止いたします。お申し込みの途中でも、発売できない場合等がありますので、勝馬投票券はお早めにお買い求めください。
申し込みの途中でも止まると書かれています。締切ぎりぎりに足す買い方は、足せたかどうか自体が不確かになるということになります。
券そのものが無効になる場合もあります
紙の券で買っている場合、もうひとつ条件があります。
勝馬投票券は、破損無効となっておりますので、汚したり、折り曲げたり、破いたりしないよう、また、光や熱に長く触れることなどのないようお願いいたします。
破損無効です。当たっていても、券が読めなければ払戻に入りません。効き方は払戻期限の記事で出した換え忘れと同じで、期待的中本数が少ない人ほど1本の穴が大きくなります。
もうひとつ、着順についての表示もあります。払戻は競走終了後に裁決委員が確定した着順に基づいて行われ、その後に競走成績上の着順の変更があっても払戻は変更されない、と書かれています。
あなたの記録は、成績表ではなく払戻で付けてください。 2つが食い違うレースが存在しうるからです。
成績表から的中率を数え直すのは、記録を付け忘れたときにやりがちな作業です。そこで拾った着順は、あなたが受け取った金額と同じ根拠ではありません。 数字がずれたときに、どちらが正しいかを判定できなくなります。
全額返還のレースは、記録の分母から消します
競走が不成立になったレースは、投資も払戻もゼロです。買わなかったのと同じになります。

| 分母に残した全額返還 | 的中率の倍率 | 正しい分母 |
|---|---|---|
| 1レース | 1.0041 | 243レース |
| 3レース | 1.0124 | 241レース |
| 5レース | 1.0209 | 239レース |
| 10レース | 1.0427 | 234レース |
| 20レース | 1.0893 | 224レース |
244レースは、当サイトが回収率の記事で出した「必要的中率と比べて判定できるレース数」です。
全額返還を外れとして数えると、的中率が過小に出ます。 影響は1レースで1.0041倍と小さいものですが、分母を間違えている状態そのものが問題になります。
この計算が言っていないこと

| よくある読み方 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 「取替えや不成立は何%起きる」 | 集計していないので出さない |
| 「出走取消と競走除外はここが違う」 | 一次情報で取れていないので書かない |
| 「騎手が代わると勝率がこう動く」 | リフト値は主張しない |
| 「押さえは必ず損」 | 1÷狙う平均配当を超えていれば別 |
倍率はすべて点数から出したもので、あなたの買い目の中身は見ていません。 実際に成立するかどうかは、足した1点の的中率次第になります。
逆算が「買う前」にしか効かない理由
ここまでの話をまとめると、ひとつの形になります。
必要的中率 = 買い目点数 ÷ 平均配当オッズ。 この2つのうち、買ったあとも自分で動かせるのは点数だけで、しかも増やす方向にしか動きません。
オッズは締切まで動きます。頭数も、騎手も、馬場も動きます。JRAはそのどれについても取り替えないと書いています。
だから逆算は、買う前に点数と狙う配当帯の2つを決めてしまうという形をとっています。この2つが決まれば必要的中率は確定し、昼にオッズが動いても合格ラインは動きません。
土曜の朝にあなたが決めていたのは、その日いちばん動かせない数字でした。
土曜に8レース買うなら、朝のうちに8つの合格ラインが出せます。10点で平均200.0倍を狙うレースなら5.000%、20点で平均300.0倍なら6.667%。昼になる前に、その日の8つの線が全部そろっています。
昼に足した5点は、そのうち1本の線を5.000%から7.500%へ動かしました。動かしたのが自分だという記録が残るのは、朝に線を出しておいた場合だけです。出していなければ、外れた理由は騎手変更のせいになります。
販売ページの「点数」も、買う前の数字です
馬券術の販売ページに点数が書いてあるとき、それは買う前に確定している数字です。当サイトが採点に使えるのもここになります。
価格1,800円のコンピの極意は単勝と複勝を使う型で、単勝24.6%・回収率111%という販売者側の表示があります(2026年9月時点)。1点が1頭なので、押さえを足す余地がそもそも少ない型です。
同じ販売元にある8,800円の3連馬券1点主義は3連単1点で、的中率3.4%・回収率316.0%という表示があります(2026年9月時点)。1点に2点目を足せば、合格ラインは一気に2.0000倍になります。点数が少ない設計ほど、押さえの重さが大きくなる例です。
19本を採点した一覧はハブ記事に置いてあります。
土曜の朝にやる3ステップ


3番目を省かないでください。 上限を決めていないと、昼に足すときの判断材料がなくなります。
買ったあとにできるのは増やすことだけです。その1本しかない手段を、どこまで使うかを朝のうちに決めておくというだけの話になります。
この記事の計算方法
- 取替えについては、JRA『馬券のルール』(2026年9月時点)の表示です。「勝馬投票券の発売開始後、同枠取消に伴う取替えを含めて出走取消、競走除外、騎手変更、馬場状況の変更等に伴うお取替えは一切行いません」。券面の間違いについても「後刻間違いの旨の申し出がありましても、お取替えいたしません」とされています。
- 発売締切時刻は発走時刻の2分前(事業所)で、「発売締切のベルが鳴りますと、発売機は自動的に停止いたします。お申し込みの途中でも、発売できない場合等があります」とされています。
- 勝馬投票券は破損無効とされています(同じ出典)。
- 全額返還になるのは2つ。①発売開始後に予定されていた競走の全部または一部を取り止め、別の日に実施することとなった場合。②競走の着順確定前に裁決委員が不成立と認めた場合で、条件は(1)災害や投石等の妨害行為その他の事由により、競走または開催執務委員の職務の執行に重大な支障があったとき(2)競走が所定の走路と異なる走路で行われたときです。
- 競走中止馬によるもの等、当該競走の出走人馬に起因するものは不成立としないとされています(走路を占拠した等で所定の走路での競走の継続が不可能と認めたときを除く)。
- 払戻は競走終了後に裁決委員が確定した着順に基づいて行われ、その後に競走成績上の着順の変更があっても払戻は変更されないとされています。
- 買い足したあとの合格ラインの倍率 = (n + m) ÷ n。もとの点数と合計点数の比そのもので、平均配当も券種も式に入りません。
- 必要な平均配当 = 点数 ÷ 的中率。的中率が変わらないなら、必要な平均配当も同じ倍率で上がります。10点・的中率5%で200.0倍が、15点なら300.0倍です。
- 足す1点の合格ライン = 1 ÷ 狙う平均配当(点数と的中率の記事で出した値)。30倍3.333% / 100倍1.000% / 300倍0.333% / 612倍0.163% / 3,549.6倍0.028%。
- 全額返還のレースを分母に残したときの的中率の倍率 = 244 ÷ (244 − k)。244レースは必要的中率と実績を比べて判定できるレース数です。
- 取替え・競走の不成立・破損の発生率は集計していません。 本文の数字はすべて「起きた場合」の計算です。
- 出走取消と競走除外の違いは、一次情報で確認できなかったので書いていません。 騎手や馬場が勝率をどれだけ動かすかについても、当サイトは値を持っていないので主張しません。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトの計算と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 出走取消・競走除外・騎手変更・馬場状況の変更による取替えは一切行われません(JRAの表示)。押し間違いも対象外です
- 買ったあとに使える手段は「足す」の1本だけ。 減らす手段も、取り替える手段もありません
- 買い足したあとの合格ラインの倍率 = (n + m) ÷ n。 10点に5点足せば1.5000倍、1点に1点足せば2.0000倍です
- 必要な平均配当も同じ倍率で上がります。 10点・的中率5%で200.0倍だったものが、15点なら300.0倍になります
- ただし足す1点の合格ラインは 1 ÷ 狙う平均配当。その1点が単独で線を超えていれば、全体は悪くなりません
- 全額返還は2つだけ。競走を取り止めて別の日に実施する場合と、競走の不成立です。馬が止まっても返還されません
- 勝馬投票券は破損無効。着順が後日変更されても払戻は変更されないので、記録は成績表ではなく払戻で付けます
- 全額返還のレースは記録の分母から消します(244 ÷ (244 − k))
あなたが次の土曜の朝にやることは、点数の上限を先に書いておくことです。 昼に足すかどうかは、その上限と 1÷狙う平均配当 の2つで決まります。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。