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あなたは10年、同じことを言ってきました。
「JRAが25%も取っていくんだから、勝てるわけがない」
飲み会でも、馬券を外したときも、口をついて出るのはこの一文です。控除率という言葉も、券種で違うことも知っています。
先週、いつものように言ったあとで、ふと引っかかりました。
「あの25%は、誰が決めているんだ」
JRAが自分で決めているのだろう、と思っていました。それなら、上げようと思えば上げられるはずです。
調べてみると、そうではありませんでした。払戻率は法律に書かれています。
この記事で出すのは、競馬法の条文と、そこから当サイトの数字がどう見え直すかです。
先に結論:下限は法律、上限は大臣、その間でJRAが決めます
競馬法(昭和二十三年法律第百五十八号)第八条第一項に、こうあります。
日本中央競馬会は、勝馬投票法の種類ごとに、勝馬投票の的中者に対し、その競走についての勝馬投票券の売得金…の額に百分の七十以上農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率を乗じて得た額に相当する金額…を、当該勝馬に対する各勝馬投票券に按分して払戻金として交付する。

3つの層に分かれています。
- 下限:百分の七十(法律そのものが定める)
- 上限:農林水産大臣が定める率
- その範囲内で、日本中央競馬会が定める率
JRAが決めているのは3層目だけでした。下限の70%は、JRAが動かせる場所にありません。
言い方を変えると、あなたが払っている控除率には上限があるということです。どの券種を選んでも、控除が30%を超えることはありません。
そして条文は「勝馬投票法の種類ごとに」と書いています。券種ごとに別々の率を定めてよいという形で、実際に5つの値が使われています。
なお、農林水産大臣が定める率の具体的な値は、当サイトでは確認できていないので書きません。
WIN5の70.00%は、法定下限ちょうどです
ここで、当サイトが使ってきた払戻率の表を見直します。

| 券種 | 払戻率 | 法定下限70.00%からの上乗せ |
|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 80.00% | +10.00pt |
| 枠連・馬連・ワイド | 77.50% | +7.50pt |
| 馬単・3連複 | 75.00% | +5.00pt |
| 3連単 | 72.50% | +2.50pt |
| WIN5 | 70.00% | +0.00pt |
WIN5だけが、法定下限ちょうどです。
当サイトは券種の階段の記事で、払戻率が2.50%刻みの階段になっていることを出しました。その階段の一番下の段が、法律の線と一致していたことになります。
階段の式を、法定下限から書き直します
前の記事では「払戻率 = 80.00% − 2.50% × 難度段数」と書きました。同じことを、下から積み上げる形にします。

払戻率 = 70.00% + 2.50% × (4 − 難度段数)
| 券種 | 段数 | 式 | JRAの値 |
|---|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 0 | 70.00 + 2.50×4 | 80.00% |
| 枠連・馬連・ワイド | 1 | 70.00 + 2.50×3 | 77.50% |
| 馬単・3連複 | 2 | 70.00 + 2.50×2 | 75.00% |
| 3連単 | 3 | 70.00 + 2.50×1 | 72.50% |
| WIN5 | 4 | 70.00 + 2.50×0 | 70.00% |
5行とも一致します。 上から引いても下から足しても同じ値ですが、下から足すと起点が法定下限になるところが違います。
ただし断っておきます。2.50%刻みで段が上がるという当てはめは、依然として当サイトのものです。JRAが実際にどういう手続きで決めているかは公表されていません。法律に書かれているのは下限と上限の枠だけです。
あなたの10年を、この枠で見直します
年100万円買っているとして計算します。

| 券種 | 払戻率 | 控除される額 | 法定下限だった場合との差 |
|---|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 80.00% | 200,000円 | 100,000円 |
| 枠連・馬連・ワイド | 77.50% | 225,000円 | 75,000円 |
| 馬単・3連複 | 75.00% | 250,000円 | 50,000円 |
| 3連単 | 72.50% | 275,000円 | 25,000円 |
| WIN5 | 70.00% | 300,000円 | 0円 |
あなたが言ってきた「25%」は、馬単・3連複の行です。あなたが年100万円買っているなら、25万円がここに当たります。
もしJRAが法定下限で運用していたら、同じ100万円で30万円になります。差は年5万円。10年で50万円です。
単勝なら差は年10万円。あなたが券種を選ぶという行為は、この表のどの行に立つかを選ぶことでもありました。
10年で見ると、3連複なら50万円、単勝なら100万円の差になります。あなたが10年言い続けてきた「25%」は、下限30%から5ポイント戻された後の数字でした。
もちろん、これは「得をしている」という話ではありません。引かれていることに変わりはありません。 ただ、引かれる量がどこで決まっているかを知っておくと、券種を選ぶときの見え方が変わります。
当サイトが券種の階段の記事で書いたとおり、段を1つ下りるたびに2.50ポイントずつ落ちます。その落ち幅が、年100万円では2万5千円という形です。
なぜ「取られている」としか感じないのか
ここに、見え方の非対称があります。控除は、引かれた後の姿でしか表示されないからです。
オッズ画面に出ているのは、すでに控除を済ませた数字です。「本当は10.0倍だが8.0倍で出している」とは書かれません。
当サイトが還元率・控除率の記事で整理したとおり、控除はオッズの中にすでに入っています。 だから必要的中率の式に重ねて引くと二重計上になります。
引かれる前の数字を見る機会がないので、「25%取られた」という感覚だけが残ります。上乗せされた5.00ptのほうは、最初から見えません。
条文を読むと、その5.00ptが「法定下限からの上積み」として存在していることが分かります。得をしたという話ではなく、見えていなかった側が数字になるという話です。
オッズ1.0倍より下が存在しない理由
第八条には、もう1つ短い項があります。
前項の払戻金の額が、勝馬投票券の券面金額に満たないときは、その券面金額を払戻金の額とする。
元返しです。 100円の券なら、最低でも100円が返ります。
これは配慮ではなく、条文に書かれている扱いでした。そして、ここから1つ線が引けます。
オッズ = 払戻率 ÷ その馬(組)への支持率。 支持率が払戻率を超えると、計算上のオッズは1.0倍を割ります。

| 券種 | 払戻率 | 元返しになる支持率 |
|---|---|---|
| 単勝 | 80.00% | 80.00%超 |
| 馬連 | 77.50% | 77.50%超 |
| 3連複 | 75.00% | 75.00%超 |
| 3連単 | 72.50% | 72.50%超 |
| WIN5 | 70.00% | 70.00%超 |
元返しになる境目は、その券種の払戻率そのものです。
単勝のオッズが1.0倍だという表示は、「その馬に票の80.00%が集まった」という意味を持ちます。
そのとき、いくら埋められているのか
支持率が払戻率を超えた場合に、計算上いくら足りなくなるかを出します。単勝(払戻率80.00%)です。

| その馬への支持率 | 計算上のオッズ | 実際の払戻 | 100円あたりの上乗せ |
|---|---|---|---|
| 80.0% | 1.000倍 | 1.000倍 | 0.0円 |
| 85.0% | 0.941倍 | 1.000倍 | 5.9円 |
| 90.0% | 0.889倍 | 1.000倍 | 11.1円 |
| 95.0% | 0.842倍 | 1.000倍 | 15.8円 |
| 100.0% | 0.800倍 | 1.000倍 | 20.0円 |
全員が同じ馬に賭けた極端な場合でも、100円につき20.0円です。控除ぶんがちょうど埋まる形になります。
1.0倍は「これ以上下がらない床」で、その床は条文が作っています。
あなたが1.0倍の馬を見たとき、「つまらない」と思うかもしれません。 ただ、その表示は支持率が払戻率に達したという情報でもあります。
当サイトが市場の勝率の記事で出したとおり、市場の勝率は「1 ÷ オッズ × 払戻率」で読めます。オッズ1.0倍なら市場の勝率は80.00%。市場がその馬に与えている評価が、そのまま数字で出ています。
床に張り付いているということは、その先の情報がオッズから読み取れないということでもあります。1.0倍の表示は、支持率80.00%でも95.0%でも同じに見えます。
これまで「JRAの表示」と書いてきた8件に、裏付けがつきました
当サイトはこの1年、JRAの『馬券のルール』を一次情報として引いてきました。条文そのものは確認していないと断り書きをつけた記事もあります。
今回、その裏付けが取れました。

| 当サイトの記事 | 条文 |
|---|---|
| 特払 | 第八条第3項(的中者がない場合、勝馬以外に投票した者に按分) |
| 払戻期限60日 | 第十一条(六十日間行使しないときは時効によつて消滅) |
| 返還 | 第十二条第3項(出走しなかった馬への投票は無効) |
| 枠連のゾロ目 | 第十二条第3項後段(同一番号の組で一頭のみ出走なら無効) |
| 競走不成立 | 第十二条第1項(出走すべき馬がなくなり、又は一頭のみ/競走が成立しなかった) |
| WIN5の上限 | 第九条第2項(農林水産省令で定める最高限度額) |
| キャリーオーバー | 第九条第1項・第3項(次に的中者があるものに係る加算金) |
| 20歳未満は購入不可 | 第二十八条 |
8件すべて、JRAの表示と条文の内容が一致していました。
一致していて当たり前だと思われるかもしれませんが、当サイトにとっては違います。「JRAがそう書いている」と「法律にそう書いてある」は別の強さだからです。
前者は運用が変われば変わります。後者は法改正が要ります。あなたが数年単位で使う前提としては、後者のほうが安心して置けるということになります。
当サイトが払戻金の計算方法の記事で「条文は未確認」と断り書きをしていた箇所も、これで埋まりました。
1つだけ、新しく分かったことがあります。WIN5で上限を超えた部分は、消えるのではなく次の加算金になります(第九条第3項)。WIN5の上限の記事では上限の存在までしか書いていなかったので、ここは条文で足りた形です。
なお、省令で定める最高限度額そのものは当サイトでは確認していないので書きません。
端数と、売得金の定義
細かいところも2つ拾っておきます。
第十条:払戻金に1円未満の端数があるときは切り捨て、その端数はJRAの収入になります。
第八条第一項の括弧書き:売得金とは「発売金額から第十二条の規定により返還すべき金額を控除したもの」です。返還されるぶんは、そもそも払戻率を掛ける対象から外れています。
当サイトが返還の記事で書いたとおり、返還は投資を巻き戻すだけの操作でした。条文の側でも、売上に数えない形になっているということです。
これはあなたの計算にも効きます。返還された金額は、控除の計算にも入っていません。 「返還されたぶんからも25%引かれているのでは」という心配は要らない、という形です。
端数のほうは、金額としては小さいものです。1円未満なので、1レースあたり最大でも1円弱。ただ、あなたの回収率は表示の払戻率よりごくわずかに低くなるという向きは押さえておいてください。
この記事が言っていないこと

| よくある読み方 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 「25%は高すぎる/妥当だ」 | 価値判断はしない |
| 「農林水産大臣が定める率は◯%」 | 確認していないので書かない |
| 「2.50%刻みは法律で決まっている」 | 当サイトの当てはめ。法律にあるのは枠だけ |
| 「条文はこう解釈すべき」 | 引用と計算にとどめる |
条文の解釈は、当サイトの仕事ではありません。引いたのは条文の文言と、そこから出る割り算だけです。
払戻率が今後変わる可能性もあります。2014年6月7日の改定前は別の値でしたし、法律の枠内であれば動かせる形になっています。
当サイトはその改定前の値を検証していません。いま使っている5つの値は、2026年9月時点のものです。変わったときは、この記事の表も書き直す必要があります。
販売ページの回収率は、どの段の話か
馬券術を読むときにも、この枠は使えます。販売ページの回収率が、どの払戻率の上に乗っているかという見方です。
単勝と複勝を使う型なら80.00%の段、3連単なら72.50%の段。同じ「回収率110%」でも、越えている高さが違います。
3連馬券1点主義(8,800円)は3連単なので、法定下限からの上乗せが2.50ptしかない段です。的中率3.4%・回収率316.0%という販売者側の表示があります(2026年9月時点)。
コンピの極意(1,800円)は単勝と複勝で、上乗せ10.00ptの段。単勝24.6%・回収率111%の表示です(2026年9月時点)。
段が違えば、同じ回収率でも要求されるものが違います。 3連単で110%を出すことは、単勝で110%を出すことより2.50ポイントぶん低いところから登っていることになります。
もっとも、あなたが比べるべきは段ではなく必要的中率です。段は出発点を決めるだけで、越えるべき線は点数と配当帯で決まります。19種を同じ物差しに乗せた結果はハブ記事に置いてあります。
条文を自分で読むための3ステップ


3番目を省かないでください。 条文を読んでも、自分の買い方の数字に落ちなければ使い道がありません。
そして、e-Gov法令検索で誰でも読めます。 当サイトが引いた条文も、同じ場所から取ったものです。
条文を読むこと自体は、あなたの回収率を1円も動かしません。動くのは、数字をどれだけ信用できるかのほうです。
当サイトはこれまで、払戻率の5つの値を全記事の土台に使ってきました。その土台が法律のどこに支えられているかが分かったので、今後の記事もこの上に積めます。
10年言い続けた「25%」は、これでどの段の・何からの差し引きなのかまで言えるようになりました。
この記事の計算方法
- 条文はすべて競馬法(昭和二十三年法律第百五十八号)から引きました。e-Gov法令検索(2026年9月時点)で公開されているものです。
- 第八条第1項:払戻対象総額は、売得金の額に「百分の七十以上農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率」を乗じた額です。売得金は「勝馬投票券の発売金額から第十二条の規定により返還すべき金額を控除したもの」と定義されています。
- 法定下限70.00%からの上乗せ:単勝・複勝+10.00pt / 枠連・馬連・ワイド+7.50pt / 馬単・3連複+5.00pt / 3連単+2.50pt / WIN5+0.00pt。WIN5は法定下限ちょうどです。
- 払戻率 = 70.00% + 2.50% × (4 − 難度段数)。券種の階段の記事の「80.00% − 2.50% × 段数」と同じ値になります。🚨 2.50%刻みで段が上がるという当てはめは当サイトのもので、法律に書かれているのは下限と上限の枠だけです。農林水産大臣が定める率の値は確認していないので書いていません。
- 第八条第2項:「前項の払戻金の額が、勝馬投票券の券面金額に満たないときは、その券面金額を払戻金の額とする」。元返しの根拠です。
- オッズ = 払戻率 ÷ その馬(組)への支持率。支持率が払戻率を超えると計算上のオッズが1.0倍を割るので、元返しになる境目は払戻率そのものになります(単勝80.00% / 馬連77.50% / 3連複75.00% / 3連単72.50% / WIN5 70.00%)。
- 単勝で支持率が高いときの上乗せ(払戻率80.00%):85.0%で5.9円 / 90.0%で11.1円 / 95.0%で15.8円 / 100.0%で20.0円(100円あたり)。
- 第十条:払戻金の1円未満の端数は切り捨て、その分は日本中央競馬会の収入とされています。
- 第十一条:払戻金・返還金の債権は「これらを行使することができる時から六十日間行使しないときは、時効によつて消滅する」。
- 第九条第2項・第3項:指定重勝式の払戻金が省令で定める最高限度額を超えるときはその最高限度額とし、超える部分は次に的中者があるものに係る加算金になります。最高限度額そのものの値は確認していないので書いていません。
- 第十二条第1項・第3項:出走すべき馬がなくなり又は一頭のみとなったとき、競走が成立しなかったときは投票が無効。出走しなかった馬への投票も無効で、同一の番号を一組とした場合にいずれか一頭のみが出走したときも同様とされています。
- 第二十八条:「二十歳未満の者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」。
- 年100万円の控除額は、当サイトが置いた例の計算です。払戻率が法定下限だった場合との差を並べただけで、現在の率の妥当性については何も述べていません。
- 条文の解釈は行っていません。 引用と、そこから出る割り算だけを載せています。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトの計算と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 払戻率は「百分の七十以上、農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率」(競馬法第八条第1項)
- 下限70%は法律、上限は大臣、その間でJRAが決めます。 JRAが動かせるのは3層目だけです
- WIN5の70.00%は法定下限ちょうど。 当サイトの階段の一番下が、法律の線と一致していました
- 払戻率 = 70.00% + 2.50% × (4 − 難度段数)(ただし2.50%刻みは当サイトの当てはめです)
- 年100万円なら、法定下限だった場合との差は単勝10万円・3連複5万円・WIN5 0円
- 元返しは条文です(第八条第2項)。元返しになる境目は、その券種の払戻率そのものでした
- 単勝で全員が同じ馬に賭けても、100円につき20.0円が埋められます
- これまで「JRAの表示」と書いてきた8件に、条文の裏付けがつきました。 WIN5の上限超過分は次の加算金になります
あなたが次に「25%取られる」と言いそうになったら、その25%がどの段の話かを思い出してください。 券種を1つ下げれば2.50ポイント、単勝まで戻れば法定下限から10.00ポイント上の段に立っています。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。