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あなたは30年、複勝を1点だけ買ってきました。
大きく当てようと思ったことはありません。堅い馬を1頭選んで、100円。 それを土日に何回か繰り返すだけです。
少頭数のレースでは、必ずやることがあります。出走表の頭数を数える。
7頭なら2着まで、8頭なら3着まで。この境目を間違えると、狙いが変わってしまうからです。30年ぶんの習慣として、指で数える癖がついています。
先月、その数え方が1つずれていることに気づきました。
数えるべきなのは、出走表の頭数ではありませんでした。
この記事で出すのは、条文に書かれているたった一語と、その一語で配当がどれだけ変わるかという数字です。
先に結論:決めるのは「発売開始の時」の頭数です
競馬法施行規則に、複勝の勝馬の定義があります。
複勝式勝馬投票法においては、勝馬投票券発売開始の時に、出走すべき馬が五頭以上七頭以下であるときは第一着及び第二着となつた馬を、八頭以上であるときは第一着、第二着及び第三着となつた馬を勝馬とする。

「勝馬投票券発売開始の時に」です。
走る頭数ではありません。馬券が売り出された瞬間の頭数で、2着までか3着までかが決まります。
当サイトは少頭数の記事で、この境目をJRAの発売表から引いていました。条文で確かめると、そこに時点の指定が入っていたという形になります。
8頭で発売が始まれば、7頭で走っても3着までです
ここから何が起きるか。発売開始後に出走取消があった場合です。
当サイトが返還の記事で書いたとおり、発売開始後に出走取消や競走除外があれば、その馬の券は返還されます。頭数は減ります。
ところが的中枠数は動きません。 発売開始の時に8頭いたなら、7頭で走っても3着までが勝馬です。
逆はありません。最初から7頭で発売が始まったレースは、何が起きても2着までです。発売開始後に馬が増えることはないので、2着までのレースが3着までに変わる道はありません。
同じ「7頭が走るレース」が、2種類あることになります。
この2つは、出走表の上では見分けがつきません。どちらも「7頭立て」と呼ばれ、同じ数の馬がゲートに入ります。 違いは紙の上ではなく、その日の時間の中にあります。
そして、あなたにとって有利に働くのは後者です。8頭で発売が始まって7頭になったレースは、3着までが当たりのまま、ライバルが1頭減った状態になります。
同じ7頭でも、理論平均配当が1.500倍違います
数字にします。複勝の理論平均配当 = 走る頭数 × 払戻率80.0% ÷ 的中枠数(点数の記事で出した形)。

| 走る頭数 | 的中枠数 | 理論平均配当 | |
|---|---|---|---|
| 発売7頭 → 走7頭 | 7 | 2 | 2.800倍 |
| 発売8頭 → 走7頭 | 7 | 3 | 1.867倍 |

2.800倍と1.867倍。比は1.500倍で、これは的中枠数の比 3 ÷ 2 そのものです。
出走表を見ただけでは、この2つは区別できません。どちらも7頭が周回しています。 違うのは、発売が始まった時点に8頭目がいたかどうかだけです。
ケース別に並べると、こうなります
もう少し広く並べます。払戻率80.0%は単勝・複勝の値で、他の券種とは混ぜません。

| ケース | 的中枠数 | 理論平均配当 | 1点の必要的中率 | でたらめの的中率 |
|---|---|---|---|---|
| 発売5頭 → 走5頭 | 2 | 2.000倍 | 50.000% | 40.000% |
| 発売7頭 → 走7頭 | 2 | 2.800倍 | 35.714% | 28.571% |
| 発売8頭 → 走8頭 | 3 | 2.133倍 | 46.875% | 37.500% |
| 発売8頭 → 走7頭 | 3 | 1.867倍 | 53.571% | 42.857% |
| 発売8頭 → 走6頭 | 3 | 1.600倍 | 62.500% | 50.000% |
| 発売18頭 → 走18頭 | 3 | 4.800倍 | 20.833% | 16.667% |
| 発売18頭 → 走17頭 | 3 | 4.533倍 | 22.059% | 17.647% |
発売8頭で2頭取り消されると1.600倍まで下がります。6頭しか走らないのに3着まで当たるので、2頭に1頭が当たりという状態になります。
多頭数では影響が小さくなります。18頭で発売して17頭になっても、4.800倍が4.533倍。5.6%の差にとどまります。
効くのは少頭数のときだけです。あなたが指で数えていた場面と、ちょうど同じところになります。
当たりやすさも1.500倍。だから損得はありません
右端の列も見てください。でたらめの的中率です。
発売7頭・走7頭なら28.571%。発売8頭・走7頭なら42.857%。こちらも1.500倍になっています。

| ケース | でたらめ | 必要的中率 | 比 |
|---|---|---|---|
| 発売7頭 → 走7頭 | 28.571% | 35.714% | 1.2500 |
| 発売8頭 → 走7頭 | 42.857% | 53.571% | 1.2500 |
| 発売8頭 → 走6頭 | 50.000% | 62.500% | 1.2500 |
比はどのケースでも1.2500です。単勝・複勝の払戻率80.0%の逆数になります。
当たりやすさが1.500倍になった分は、必要的中率が1.500倍上がることでちょうど相殺されています。 得も損もありません。
当サイトが頭数の記事で書いたのと同じ形です。動くのは配当と当たる回数で、その2つは必ず逆向きに、同じ倍率で動きます。
1年200レース買うと、当たる回数は2.571倍違って、手残りは同じです
あなたの1年を数字にします。複勝1点100円を、年200レース。 投資は20,000円です。
どのレースを選ぶかで、1年の見え方はまるで変わります。
| 1年ずっとこの条件なら | 当たる回数 | 理論平均配当 | 1年の払戻 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 18頭立てばかり | 33.3回 | 4.800倍 | 16,000円 | 80.0% |
| 発売7頭ばかり | 57.1回 | 2.800倍 | 16,000円 | 80.0% |
| 発売8頭→走7頭ばかり | 85.7回 | 1.867倍 | 16,000円 | 80.0% |
当たる回数は33.3回と85.7回で2.571倍違います。 ところが1年の払戻は、どれも16,000円です。
的中の感触だけで言えば、3番目の1年は圧勝です。4回に1回しか当たらない1年と、2回に1回近く当たる1年では、土曜の帰り道の気分が違います。
それでも財布の中身は同じです。20,000円を出して16,000円が戻る。 差は4,000円で、これが1年ぶんの目減りです。
30年続ければ、投資600,000円に対して払戻480,000円。差は120,000円になります。
当たる回数がいくら増えても、この120,000円は減りません。 減らすには、でたらめより良い読みで的中率そのものを上げるしかありません。的中枠数は、そこには効きません。
30年の習慣に、1行だけ足します
あなたの数え方は、間違っていたわけではありません。取消がなければ、発売開始の頭数と走る頭数は一致します。 ほとんどの日は、指で数えた結果がそのまま正解でした。
ずれるのは、発売開始後に取消が出た日だけです。

| これまで | これから | |
|---|---|---|
| 数えるもの | 出走表の頭数 | 発売開始時の頭数 |
| 見る場所 | パドック前の出走表 | 取消の発表を確認 |
| 取消があった日 | 減った頭数で判断 | 減る前の頭数で判断 |
| 判断がずれる日 | 取消があった日 | なし |
足すのは「取消があったかどうか」の1行だけです。取消がなければ、これまでどおりで構いません。
なお、取消がどれくらい起きるかは当サイトでは集計していません。 頻度の話はできないので、起きたときの数字だけを出しています。
なぜ、走る頭数だと思い込むのか
出走表には走る馬しか載っていないからです。取り消された馬は、消されるか、印が付いて脇へ寄せられます。
あなたが見ているのはすでに整理された後の紙で、「発売開始の時に何頭いたか」はそこに書かれていません。
もう1つ、言葉の側にも理由があります。「7頭立て」「8頭立て」という言い方は、走る頭数を指すのが普通です。条文の側だけが別の時点を指しているので、日常の言葉と条文がずれているという形になります。
時間の流れも、この思い込みを後押しします。あなたが出走表を開くのは、たいてい発売が始まった後です。発売開始という出来事は、目の前で起きません。ゲートが開く場面や、パドックの周回とは違って、掲示も放送もないまま通り過ぎていきます。
見えない時点で決まったことを、見える時点の情報で確かめようとしている。ずれているのは数え方ではなく、数える瞬間だったことになります。
しかも、ほとんどの日はこのずれが表に出ません。取消がなければ両者は一致するので、30年ぶんの経験が「走る頭数で合っている」と繰り返し答え合わせをしてくれます。 ずれる日だけ、静かに答えが変わります。
当サイトが取替えの記事で書いたとおり、JRAは発売開始後の取替えを一切行いません。買った時点の条件が固定されるという考え方が、ここにも通っています。的中枠数も、発売開始の時点で固定されていたわけです。
ワイドと3連単の勝馬も、条文に定義があります
ついでに、同じ条文の近くにあるものを引いておきます。
連勝複式勝馬投票法においては…拡大馬番号二連勝複式勝馬投票法にあつては第一着及び第二着となつた馬を一組としたもの、第一着及び第三着となつた馬を一組としたもの並びに第二着及び第三着となつた馬を一組としたものを…勝馬とする。

ワイドの「3組が当たり」も条文に書かれています。 当サイトが理論平均配当を3で割ってきたのは、ここが根拠になります。
3連単については「第一着、第二着及び第三着となつた馬をその順位に従い一組としたもの」が勝馬です。
そして目に留まるのが、連勝単式の列挙にある「枠番号二連勝単式勝馬投票法」です。枠単にあたりますが、JRAの9券種には入っていません。当サイトが重勝式の記事で書いたのと同じ構図で、法令に定義があっても発売されていないものがあります。
答えが出るまでのレース数も、的中枠数で変わります
もう1つ交差させます。当サイトが総額の記事で使った判定レース数 = (1 − 的中率) ÷ (的中率 × 0.01) です。
複勝1点買いなら、1レースで当たるか外れるかの2通りしかないので、この式がそのまま使えます。
| ケース | でたらめの的中率 | 判定レース数 | 年200レースで |
|---|---|---|---|
| 発売18頭 | 16.667% | 500 | 2.5年 |
| 発売7頭 | 28.571% | 250 | 1.25年 |
| 発売8頭 → 走7頭 | 42.857% | 133.3 | 0.67年 |
500レースと133.3レースで3.750倍の差です。的中枠数が3で頭数が少ないほど、自分の読みがでたらめより良いかどうかが早く分かります。
ここは損得ではなく速度の話です。回収率はどのケースでも80.0%のままで、動いているのは答えが出るまでの時間だけになります。
少頭数の複勝を30年続けてきたなら、あなたはすでに何周ぶんもの答えを持っていることになります。
この記事が言っていないこと

| よくある読み方 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 「取消があった日は狙い目」 | 比は1.2500で動かない。得も損もしない |
| 「取消はこれくらい起きる」 | 集計していないので出さない |
| 「表の配当が実際の値」 | 理論値。実際は人気で大きくばらつく |
| 「条文はこう解釈すべき」 | 引用と計算にとどめる |
理論平均配当は、どの馬も同じ確率で来ると置いた値です。実際には人気の偏りがあるので、あなたが当てた複勝がこの値になるわけではありません。
払戻率80.0%は単勝・複勝の値です。ワイドは77.5%、3連複は75.0%と別の値なので、この表の数字を他の券種に持ち込まないでください。
販売ページの複勝の数字も、この境目をまたいでいます
馬券術で複勝を扱うものがあります。そこに書かれた的中率が、2着までのレースと3着までのレースのどちらを含んでいるかは、まず書かれていません。
複勝70%という表示のある商材を当サイトは採点しましたが、5〜7頭立てを含むかどうかで意味が変わります。 2着までのレースが混ざっていれば、同じ70%でも難度が違います。
単勝と複勝を使うコンピの極意(1,800円)は、単勝24.6%・回収率111%という販売者側の表示です(2026年9月時点)。単勝には的中枠数の問題がないので、この点では読みやすい側になります。
一方、3連単1点の3連馬券1点主義(8,800円)は的中率3.4%・回収率316.0%の表示(2026年9月時点)。3連単も的中枠数は常に1なので、同じく影響を受けません。
的中枠数が変わるのは複勝とワイドだけです。19種の券種はハブ記事の表で確認できます。
複勝を扱う商材を見るときは、表示された的中率が何頭立てのレースで測られたかを探してください。書かれていなければ、その数字は2着までと3着までの混ざったものとして読むしかありません。
当サイトはこれを欠点とは書きません。5〜7頭立ては発売レース数そのものが少ないので、混ざっていても全体への影響は小さいはずです。ただし「はず」であって、当サイトはレース数を集計していないので確認できていません。
少頭数のレースで買う前の3ステップ


3番目を省かないでください。 的中枠数が分かっても、配当の見当がつかなければ数える意味が半分になります。
30年続けてきた数え方に、取消の確認を1つ足すだけです。パドックへ向かう前の数秒で終わります。
数え方そのものを変える必要はありません。変えるのは、どの時点の頭数を数えるかという1点だけです。
この記事の計算方法
- 複勝の勝馬の定義は、競馬法施行規則(昭和二十九年農林省令第五十五号)の表示です。e-Gov法令検索(2026年9月時点)で公開されています。「複勝式勝馬投票法においては、勝馬投票券発売開始の時に、出走すべき馬が五頭以上七頭以下であるときは第一着及び第二着となつた馬を、八頭以上であるときは第一着、第二着及び第三着となつた馬を勝馬とする」。
- 複勝の理論平均配当 = 走る頭数 × 払戻率80.0% ÷ 的中枠数。的中枠数は発売開始の時の頭数で決まり、発売開始後に取消があっても変わりません。
- ケース別の値:発売5頭→走5頭で2.000倍 / 発売7頭→走7頭で2.800倍 / 発売8頭→走8頭で2.133倍 / 発売8頭→走7頭で1.867倍 / 発売8頭→走6頭で1.600倍 / 発売18頭→走18頭で4.800倍 / 発売18頭→走17頭で4.533倍。
- 同じ7頭が走るレースで、2.800倍と1.867倍の1.500倍差が出ます。これは的中枠数の比 3 ÷ 2 そのものです。
- 必要的中率 ÷ でたらめの的中率 は、どのケースでも1.2500(=1 ÷ 払戻率80.0%)。当たりやすさが1.500倍になった分は、必要的中率が1.500倍上がることで相殺されます。
- ワイドの的中枠数3の根拠も同じ規則にあります。「拡大馬番号二連勝複式勝馬投票法にあつては第一着及び第二着となつた馬を一組としたもの、第一着及び第三着となつた馬を一組としたもの並びに第二着及び第三着となつた馬を一組としたものを…勝馬とする」。
- 連勝単式の列挙には「枠番号二連勝単式勝馬投票法」もありますが、JRAは発売していません。
- 払戻率80.0%は単勝・複勝の値です(2014年6月7日改定)。ワイドは77.5%、3連複は75.0%、3連単は72.5%で、この表の数字を他の券種に持ち込まないでください。
- 出走取消や競走除外がどれくらい起きるかは集計していません。 起きた場合の数字だけを出しています。
- 理論平均配当は、どの馬も同じ確率で来ると置いた値です。実際の配当は人気の偏りで大きくばらつきます。
- 条文の解釈は行っていません。 引用と、そこから出る割り算だけを載せています。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトの計算と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 複勝の的中枠数を決めるのは、「勝馬投票券発売開始の時に」の頭数です(施行規則)
- 8頭で発売が始まれば、1頭取り消されて7頭で走っても3着までのままになります
- 同じ7頭が走るレースで、理論平均配当は2.800倍(発売7頭)と1.867倍(発売8頭)で1.500倍差
- 発売8頭で2頭取消なら1.600倍。18頭で1頭取消なら4.800倍→4.533倍で5.6%差にとどまります
- 効くのは少頭数のときだけです。多頭数では影響が小さくなります
- 当たりやすさも1.500倍上がるので、損得はありません。 比は1.2500で動きません
- ワイドの的中枠数3も条文に定義があります。的中枠数が変わるのは複勝とワイドだけです
- 連勝単式の列挙には枠単もありますが、JRAは発売していません
あなたが次に少頭数のレースを買うときにやることは、取消の発表を1回だけ確認することです。 取消がなければ、これまでの数え方がそのまま使えます。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。