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去年、あなたは1着同着のレースを当てました。
単勝を1点、1,000円。ゴール板の前で2頭が並んで、写真判定のあと「同着」の表示が出ました。
その瞬間に思ったのは、「配当が半分になるな」ということです。同着なら山を2つに割る、と昔から聞いていました。
ところが、掲示された配当は思ったより高い数字でした。半分どころか、単独勝ちとほとんど変わらないように見えました。
「なぜだ」と思ったまま、1年が過ぎています。
この記事で出すのは、払戻金の算式そのものと、その中のPという記号の定義です。理由は、条文の一行に書かれていました。
先に結論:割られるのは「的中者がいる勝馬の数」です
払戻金の計算式は、競馬法施行規則の付録第六に載っています。記号の定義まで、法令の中に書かれています。

(W+D/P)×R+A/P
- Wは、当該勝馬に対する勝馬投票券の総券面金額
- Dは、出走した馬であつて勝馬以外のものに対する勝馬投票券の総券面金額
- Pは、勝馬の数
- Rは、法第八条第一項…の規定により競馬会、都道府県又は指定市町村が定める率
- Aは、法第九条第一項又は第三項…の加算金
Pは「勝馬の数」と書かれています。同着なら2、というのは正しい読み方です。
ところが、同じ規則の第九条第二項に、こうあります。
前項の規定により払戻金を算出する場合において、勝馬投票の的中者のない勝馬があるときは、その勝馬は、その算出については、勝馬でないものとする。
的中者が1人もいない勝馬は、計算上「勝馬でないもの」として扱われます。 つまりPには数えません。
条文を2つ重ねると、Pは実質「的中者がいる勝馬の数」になります。「勝馬の数」とだけ覚えていると、この一行が落ちます。
そしてもう1つ動きます。勝馬でないものとして扱われた馬の票は、Dの側に入ります。 票がゼロなら足しても変わりませんが、扱いとしてはそうなります。
あなたの1,000円が、いくらになっていたか
具体的な数字で見ます。売上と票の配分は、当サイトが置いた仮の値です。

| ケース | P | 配当 | あなたの1,000円 |
|---|---|---|---|
| 1着同着・両方に的中票あり | 2 | 4.000倍 | 4,000円 |
| 1着同着・相手に的中票ゼロ | 1 | 7.200倍 | 7,200円 |
| 単独勝ち | 1 | 7.200倍 | 7,200円 |
1つ目は売上1,000万円で、あなたの馬に100万円・相手の馬に100万円・その他に800万円が入った場合。2つ目は売上900万円で、相手の馬に1円も入っていない場合です。
同じ「1着同着」でも、4,000円と7,200円。差は3,200円になります。
そして2つ目と3つ目が同じ値であることに注目してください。相手に的中票が1枚も売れていなければ、計算は単独勝ちとまったく同じになります。
Wは割られず、Dだけが割られます
式をもう一度見ます。(W + D/P) × R。よく見ると、分母のPが付いているのはDの側だけです。

Wはあなたと同じ馬を買った人たちの総額で、これはそのまま残ります。Dは外れた馬に賭けられた総額で、これが勝馬の数で分けられます。
「山を2つに割る」という言い方は、Dの部分だけを指していたことになります。
Pを1から3まで動かすと、こう変わります(W=100万円・D=800万円・R=80.0%の場合)。
| P | 配当 |
|---|---|
| 1 | 7.200倍 |
| 2 | 4.000倍 |
| 3 | 2.933倍 |
きれいに半分・3分の1にはなりません。 Wが割られないぶん、下がり方はゆるやかです。
P=1からP=2で0.556倍、P=2からP=3で0.733倍。落ち方そのものが、Pが増えるほど小さくなります。
理由は単純で、Pが大きくなるほどD/Pの項が小さくなり、割られないWの比重が上がるからです。極端に言えば、Wが大きくDが小さいレースでは、同着でもほとんど下がりません。
あなたが去年見た配当も、この構造の上にありました。 「半分」という言葉が指していたのは、式全体ではなく一部だけです。
当サイトは同着の記事でこの式を扱いましたが、そこではJRAの表示を引いただけで条文は未確認と断り書きをしていました。今回、法令の付録そのもので確認が取れた形です。
5つの記号のうち、あなたが選べるのは1つだけです
記号をひとつずつ見ると、この式の性格が分かります。
| 記号 | 何を表すか | あなたが動かせるか |
|---|---|---|
| W | 同じ馬を買った人の総額 | 動かせない(自分のぶんだけ足せる) |
| D | 外れ馬に賭けられた総額 | 動かせない |
| P | 的中者がいる勝馬の数 | 動かせない |
| R | 券種ごとの率 | 券種を選べば選べる |
| A | 加算金 | 動かせない |
5つのうち、あなたが選べるのはRだけです。それも「決める」のではなく、券種を選ぶことで5つの値のどれかを取るという形になります。
W・D・P・Aは、他の人がいくら買ったか、何頭が同着になったか、前回までに積み残しがあったかで決まります。どれもあなたの手の外にあります。
当サイトが買い方を決める順番の記事で書いたのは、買う前に閉じられるのは券種・頭数・点数の3つだという話でした。配当の側から見ても、あなたが触れるのは券種だけという形で一致します。
なぜ「半分になる」と覚えてしまうのか
ここに、覚え方の非対称があります。言い伝えは、いちばん多い場合だけを拾うからです。
人気のある2頭が同着になれば、どちらにも票が入っています。その場合のPは2で、Dは確かに2つに割られます。 実際にこの形が多いはずです。
ところがPの定義は「勝馬の数」ではなく、条文を2つ読むと「的中者がいる勝馬の数」でした。例外のほうは言い伝えに入ってきません。
あなたが去年見た配当は、言い伝えの外側にある場合でした。理由が分からなかったのは記憶違いではなく、そもそも聞いていたルールが1つ足りなかったからです。
この式は、地方競馬にも同じように使われます
Rの定義をもう一度読みます。
Rは、法第八条第一項(法第二十二条において準用する場合を含む。)の規定により競馬会、都道府県又は指定市町村が定める率とする。
競馬会(JRA)だけでなく、都道府県や指定市町村も並んでいます。
つまり同じ算式が、中央競馬にも地方競馬にも使われるという形です。違うのはRに入る値だけになります。
当サイトは中央競馬の払戻率しか扱っていませんが、式の形そのものは共通だということが条文から読めます。地方競馬の率については、当サイトでは確認していません。
これはあなたにとって、サイトの計算がどこまで使えるかの線でもあります。W・D・P・Aの扱いは同じなので、地方競馬でもRさえ分かれば同じように計算できるという形になります。
ただし当サイトはその値を持っていないので、地方競馬の数字をこのサイトの表から拾うことはできません。 そこは主催者の公表資料で確かめてください。
加算金だけ、払戻率が掛かりません
式の最後の項も見ておきます。+A/Pの部分です。

WとDにはRが掛かります。ところがAは、Rを掛けずにそのまま足され、Pで割られるだけです。
これが何を意味するか。加算金は払戻率で目減りしません。
| 加算金A | 配当(W=100万円・D=800万円・R=70.0%・P=1) |
|---|---|
| 0円 | 6.300倍 |
| 1億円 | 106.300倍 |
| 5億円 | 506.300倍 |
売上から新しく引かれるのではなく、前回までに積み上がったものがそのまま乗る形です。配当の跳ね方が大きいのは、この構造によるところがあります。
なお、加算金があるかどうかや金額は個別のレースによります。 上の値は当サイトが置いた仮の例です。
率は、決めたら届け出ることになっています
もう1つ、短い条文があります。
競馬会は、法第八条第一項の規定により払戻金に係る率を定めたときは、遅滞なく、農林水産大臣に届け出なければならない。これを変更したときも同様とする。
率を決めたら届出、変えたときも届出です。
当サイトが払戻率の法的な枠の記事で書いたとおり、率には法定の下限と大臣の定める上限があります。そのうえで届出の義務まで置かれているという形になります。
JRAが決めて、それで完結する仕組みにはなっていません。
あなたが買うたびに掛けられているRは、法律の下限、大臣の上限、届出という3つを通った値です。数字そのものは1年前と同じでも、どこから来ているかが分かると扱いが変わります。
当サイトはこのRを全記事の土台に使っています。その土台が条文のどこに支えられているかを、これで2本の記事で押さえた形になります。
あなたが次に同着を見たとき、何を見るか
去年のレースは終わっていますが、次に同じ場面が来たときの見方は決められます。

見るのは相手の馬のオッズです。極端に高いオッズがついていた馬なら、的中票が少ない可能性があります。
もっとも、票が1枚も無いかどうかは外からは分かりません。 分かるのは確定した配当を見たあとです。
それでも、「半分になるはずなのに、ならなかった」で止まらずに済みます。 割られるのはDだけで、Pは的中者がいる勝馬の数。この2つを知っていれば、出た数字の説明がつきます。
1年前のあなたの3,200円
去年のあなたの1,000円は、言い伝えどおりなら4,000円でした。実際には7,200円だった可能性があります。
差は3,200円。金額としては大きくありませんが、説明がつかないまま1年持ち越したのはそこではありません。
当サイトが手残りの記事で書いたように、説明のつかない数字は記録の中で浮きます。 「なぜか高かった日」として残ると、あとで自分の成績を読み返すときに邪魔になります。
式と記号の定義を持っておくと、その日の数字がその場で閉じます。 それがこの記事の使い道です。
閉じるというのは、「なぜか」を残さないということです。あなたの記録に「7,200円・1着同着・相手に票が薄かった」と書けていれば、来年見返しても引っかかりません。
逆に「4,000円のはずが7,200円だった」とだけ残っていると、その1行が記録全体の信頼を少し下げます。 説明できない行が増えるほど、自分の集計を信じにくくなるからです。
金額は3,200円でも、効いているのは記録の側という形になります。
この記事が言っていないこと

| よくある読み方 | 当サイトの扱い |
|---|---|
| 「同着は狙える」 | 買う前に分かるものではない |
| 「的中者ゼロの同着はよく起きる」 | 発生率は集計していないので出さない |
| 「表の売上と配分が実際の値」 | すべて当サイトが置いた仮の値 |
| 「条文はこう解釈すべき」 | 引用と計算にとどめる |
条文の解釈は行っていません。引いたのは付録の算式、記号の定義、第九条第二項の文言と、そこから出る割り算だけです。
なお、付録第七に別の算式(T/P)×A もありますが、どの場面で使われるかは当サイトで確認していないので書きません。
販売ページの回収率は、この式の外にあります
馬券術の販売ページに並ぶ回収率は、実際に出た配当を集計した数字です。この算式そのものは、そこに出てきません。
ただ、配当がどう決まるかを知っていると、販売ページの数字の読み方が1つ増えます。 極端な高配当が1本混じっているのか、平均的な配当が積み上がった結果なのか。同じ回収率でも中身が違います。
3連馬券1点主義(8,800円)は3連単1点で、的中率3.4%・回収率316.0%という販売者側の表示です(2026年9月時点)。当サイトが逆算した平均配当は92.94倍で、3連単の理論平均3,549.6倍の0.026倍。人気サイドの帯という位置になります。
コンピの極意(1,800円)は単勝24.6%・回収率111%の表示(2026年9月時点)。逆算した平均配当は4.51倍で、単勝の理論平均14.4倍の0.313倍です。
どちらも理論平均より下の帯を使っています。19種の逆算結果はハブ記事にまとめました。
配当を自分で確かめる3ステップ




3番目を省かないでください。 記号に値を入れないと、式は覚えただけで終わります。
そして、この式は法令に載っているものです。 e-Gov法令検索で誰でも読めるので、当サイトの引用が気になったときはそちらで確かめられます。
この記事の計算方法
- 算式はすべて競馬法施行規則(昭和二十九年農林省令第五十五号)から引きました。e-Gov法令検索(2026年9月時点)で公開されているものです。
- 付録第六(第九条第一項、第四十五条第三項関係):(W+D/P)×R+A/P。記号の定義も同じ付録に書かれています。W=当該勝馬に対する勝馬投票券の総券面金額 / D=出走した馬であつて勝馬以外のものに対する勝馬投票券の総券面金額 / P=勝馬の数 / R=法第八条第一項の規定により競馬会、都道府県又は指定市町村が定める率 / A=法第九条第一項又は第三項の加算金。
- 🚨 同規則第九条第2項:「前項の規定により払戻金を算出する場合において、勝馬投票の的中者のない勝馬があるときは、その勝馬は、その算出については、勝馬でないものとする」。この2つを合わせると、Pは実質「的中者がいる勝馬の数」になります。
- 検算(単勝・R=80.0%):①1着同着で両方に的中票あり(売上1,000万円・あなたの馬100万円・相手100万円・その他800万円)→ P=2で4.000倍 ②1着同着で相手に的中票ゼロ(売上900万円・あなたの馬100万円・相手0円・その他800万円)→ P=1で7.200倍 ③単独勝ち(売上900万円)→ P=1で7.200倍。②と③は同じ値になります。
- Pだけを動かした場合(W=100万円・D=800万円・R=80.0%):P=1で7.200倍 / P=2で4.000倍 / P=3で2.933倍。Wは割られないので、きれいに半分・3分の1にはなりません。
- 加算金Aの効き方(W=100万円・D=800万円・R=70.0%・P=1):A=0円で6.300倍 / 1億円で106.300倍 / 5億円で506.300倍。AにはRが掛かりません。
- 率の届出:「競馬会は、法第八条第一項の規定により払戻金に係る率を定めたときは、遅滞なく、農林水産大臣に届け出なければならない。これを変更したときも同様とする」(同規則)。
- 売上と票の配分は、すべて当サイトが置いた仮の値です。実在のレースの数値ではありません。
- 同着の発生率、的中者のいない勝馬が出る割合は集計していないので出していません。
- 付録第七(T/P)×A の適用場面は確認していないので書いていません。
- 条文の解釈は行っていません。 引用と、そこから出る割り算だけを載せています。
- 控除率は必要的中率の式に重ねて引いていません。 パリミュチュエル方式なので、控除はオッズの中にすでに入っています。
- 販売ページの数値は販売者による表示(2026年9月時点)で、当サイトが逆算した平均配当と書き分けています。当サイトはこれらの商材を購入していません。
まとめ
- 払戻金の算式は競馬法施行規則の付録第六にあります。(W+D/P)×R+A/P で、記号の定義も条文に書かれています
- Pは「勝馬の数」ですが、的中者のいない勝馬は算出上「勝馬でないもの」とされます(同規則第九条第2項)
- したがってPは実質「的中者がいる勝馬の数」。1着同着でも相手に1枚も売れていなければ、Pは増えません
- 単勝の例で4.000倍と7.200倍=1.800倍の差。相手に的中票ゼロの同着は、単独勝ちと同じ計算になります
- Pで割られるのはDだけで、Wは割られません。 だからP=2でもきれいに半分にはなりません(7.200→4.000→2.933倍)
- AだけRが掛からず、そのまま足されてPで割られます。 加算金は払戻率で目減りしません
- Rの定義に都道府県・指定市町村も並んでいます。 同じ算式が地方競馬にも使われる形です
- 率は決めたときも変えたときも、農林水産大臣への届出が必要とされています
あなたが次に同着を見たときにやることは、W・D・P・Rの4つに値を入れてみることです。 出た数字と掲示された配当が合えば、その日の記録はその場で閉じます。
公営競技はのめり込みすぎると生活に支障が出ることがあります。使う金額と回数はあらかじめ決めてください。ご自身やご家族のことで気になることがあれば、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(https://scga.jp/)にご相談ください。